体調不良自動診断装置

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 私はいま「体調不良自動診断装置」なるものを開発している。スマホで心電図も血圧も脈も測れる時代なのだから、症状を入力すればAIが「あなたは○○病の疑いがあります」と言ってくるのも当然だ。


 だったらいっそ採血もレントゲンも家でできるようにして、朝起きた瞬間に「今日のあなたは元気です。なお昨日は塩分を摂りすぎました。ついでに深夜までエロサイトを見ていましたね。その影響で血圧が上がっています。血圧が上がると脳梗塞や心筋梗塞のリスクが増えますので、今後は「法律、統計、行政手続き」などの、なるべく興奮しないサイトをご覧ください」と淡々と告げてほしい。


 そんな未来は遅かれ早かれ来るし、私はその先駆者になりたい。ただし医者や看護師が不要になるわけではない。AIが「風邪です」と言えば医者が「いやそれは寝不足」と訂正し、AIが見落とせば医者が拾う。AIと医者の二人三脚で体調を見守る時代だ。


 などと壮大なことを考えながら病院に行くと、待合室のじじぃばばぁが「あら田中さん最近見ないわねぇ、死んだのかしら」と天気予報並みに平然と言っている。病院とは本来、具合が悪くなって行く場所のはずなのに、ここでは来院が多いほど健康扱いされるという謎の世界である。


 私は拡張型心筋症を抱えているから、薬を飲まなければそのうち死ぬのは理解しているが、別に悲観はしていない。むしろ「どうせならAIに“そろそろ寿命です。本日の予定は全キャンセルでお休みください。なお昨夜の過ごし方は健全ではありませんでした”と言われたいと思っているくらいだ。


 不整脈なら数分で済むかもしれないし、心不全なら苦しくなって気絶してそのまま……という可能性もある。ただし溺れるような苦しさだけは絶対に嫌だ。


 そんなことを考えていると隣のばあさんが「あんた、そんなことばっかり考えてると早死にするわよ」と笑うので、「いやいやAIが見守ってくれますから大丈夫ですよ」と返すと、ばあさんは「でもそのAI、田中さんの生死も教えてくれないの。最近見てないのよ」と真顔で言う。


 そこへ受付の看護師が「田中さんなら昨日来ましたよ。元気でした」と告げると、待合室全体が「なーんだ、生きてたのねぇ」と拍手喝采になる。その光景を眺めながら私は思う。未来の医療がどれほど進化しても、この病院の“生存確認システム”と、ばあさんたちの情報網には、たぶん永遠に勝てないだろう、と。

ーほいたらねー

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