スピッツ 【楓】 『ゆっくりと忘れていくきみへ』

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スピッツ / 楓


今日も話が長いから
曲を聴きながら読んで欲しい
ただ 話の流れの邪魔になるから
一旦動画を止めて
読み終えた後に
また曲を聴くと言い

物語的にはこの【楓】は映画化されており
同一のストーリーにすると叱られるので
喪失を抱えたまま、それでも前を向いて生きていく
をテーマに記憶をなくす妻と
それを最後まで介護する夫
のお話とした

では

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『ゆっくりと忘れていくきみへ』
――きみが僕を忘れても、僕はきみを忘れない――

プロローグ
夕方の光が、古い木の家の縁側をやさしく照らしていた。
庭では、梅の木が静かに揺れている。

男は、湯呑みを両手で包みながら、隣に座る妻をそっと見つめていた。
妻は黙ったまま、庭の梅を眺めている。

白くなった髪。
細くなった肩。
それでも、その横顔は、若いころと変わらないほど美しかった。

ただ――
その瞳の中に、もう自分が映っていないことを、男は知っていた。

第一章 忘れられていく日々
「……あなた、どちらさま?」
妻は困ったように、でも穏やかに微笑んだ。
男の胸が、ぎゅっと締めつけられる。

「近所の者ですよ。
 少し、お話をしに来ました」
声が震えないように、ゆっくりと言う。

嘘ではなかった。
この人の人生の、
すぐそばに、男はずっといたのだから。

妻は湯呑みを受け取ると、嬉しそうに頷いた。
「まあ……ありがとうございます。
 うちの主人もね、あなたみたいに優しい人だったのよ」

男は、そっと目を閉じた。
――その“主人”は、ここにいる。
今も、あなたの隣に。

第二章 面影の中の妻
夜。
妻が眠ったあと、男は古いアルバムを開いた。

そこには、若い日の妻がいた。
海辺で風に髪を揺らして笑う姿。
結婚式で、照れながら涙ぐむ姿。
子どもを抱いて、幸せそうに笑う姿。

「……きれいだな」
声が、かすれる。

「お前は、ずっと……
 こんなにも、きれいだった」

今も、妻は美しい。
ただ、記憶の灯りが、少しずつ消えていくだけ。

男はアルバムを閉じ、胸に抱いた。
「大丈夫だ」
「お前が忘れても……
 俺が、全部覚えている」

第三章 小さな奇跡
ある日の午後。
縁側で並んで座っていたとき、妻が突然、男の手を握った。

「……ねぇ」
「あなたの手、あったかいわね」

男は驚いて、妻を見る。
その目は――
ほんの一瞬、昔のままだった。

「あなた……
 どこかで、会ったことがある気がするの」

男の喉が、きゅっと鳴った。
「ええ」
「きっと……
 とても、長い間」

妻は微笑み、男の肩にそっと頭を預けた。
「そう……」
「なんだか、安心するの」

その一言で、
男の胸に積もっていた何年分もの寂しさが、静かにほどけた。

第四章 それでも続く日々
けれど、奇跡は長くは続かなかった。
翌朝。
妻はまた、男を見て首をかしげた。

「……あなた、どちらさま?」

男は、微笑んだ。
昨日のぬくもりを、胸にしまいながら。

「近所の者ですよ」
「今日も、来ました」

妻は嬉しそうに笑った。
「まあ……ありがとう」
「あなたが来てくれると、不思議と心が落ち着くの」

男は、静かに頷いた。
「それなら……」
「何度でも毎日、来ますよ」

最終章 前を向くということ
夜。
男はひとり、縁側で星を見上げていた。

妻は部屋で、静かに眠っている。
「お前は、俺を忘れていく」
夜空に向かって、そっと語りかける。

「でもな……
 俺は、お前を忘れない」

拳を、静かに握りしめる。
「どんなお前でもいい」
「名前を呼ばれなくてもいい」
「それでも……俺は、前を向いて生きる」

失う悲しみは消えない。
忘れられる痛みもなくならない。

それでも――
愛だけは、形を変えて、生き続ける。

男は立ち上がり、妻の眠る部屋へ向かった。

「明日も……」
「ちゃんと、会いに来るからな」

その声は、
夜風に溶けながら、
静かに、深く、残っていた。

ーほいたらねー

最後までお読みくださりありがとうございました。
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この記事へのコメント

ミッターマイヤー
2026年01月03日 21:22
なき兄たん、こんばんは。

拝読しました。
この曲によく合う小説ですね。
胸がきゅんってなりました。
ぐっじょぶ(*´ω`*)b
目黒蓮根
2026年01月04日 14:34
>三田舞夜さん

はろー
どうやったらこのブログコメント出来たんだ。
俺はまだこの仕組みがわかってないぞ。
ブログ村バナークリックしとけよー。