【恋人】鈴木雅之

デニムのワンピースを着たアジア人女性イラストs.jpg


「ねえ、また聞いてくれる?」

 彼女――**美咲(みさき)**は、缶コーヒーを両手で包みながら言った。
 夜の公園。ベンチは冷たく、空だけがやけに優しかった。

「いいよ。どうしたの?」

 **悠人(ゆうと)**は、いつもと同じ返事をした。
 “友達として、完璧な返事を”。

「……彼ね、また既読スルー。三日目」

「そっか」

「前はこんな人じゃなかったんだよ?」

「うん」

「私、重いのかな」

「そんなことないと思うよ」

 簡単な相づち。
 それだけでいい。
 それだけしか、言えない。

(――好きだよ。
 どうしようもないくらい)

 喉の奥までせり上がる言葉を、悠人は飲み込んだ。

「ねえ悠人」

「なに?」

「男の人って、どうして急に冷たくなるの?」

「……忙しいとか、余裕がないとか」

「ふーん……」

 美咲は空を見上げた。

「ねえ、私、どうしたらいい?」

「……少し、距離を置いてみたら?」

「それで、嫌われたら?」

「……それなら」

 それなら、僕がそばにいる
 そう言いかけて、止めた。

「それなら……ちゃんと話したほうがいいさ」

「悠人って、ほんと優しいよね」

 その一言が、胸に刺さる。

(優しい“友達”でいるための、呪縛みたいだ)

 数日後。
 同じベンチ。
 今度は、美咲の肩が小さく震えていた。

「……ダメだった」

「……そっか」

「『今は恋愛する余裕ない』だって」

「……」

「ひどくない?」

「……ひどいね」

 美咲は顔を覆い、声を殺して泣いた。

「好きなのに……
 こんなに好きなのに……」

 その瞬間、悠人の腕が、勝手に動きそうになる。

(抱きしめたい
 泣きたいくらい、恋人だ)

 でも――

「……ここ、寒いから」

 そう言って、少しだけ距離を詰める。

「ありがとう……悠人」

 彼女の肩が、彼の肩に触れる。

「ねえ」

「なに?」

「私、変じゃないよね」

「変じゃない」

「重くない?」

「重くない」

「……私、ちゃんと愛される価値あるよね」

「あるよ」

 即答だった。

 君を愛してる僕が、ここにいる
 その事実だけが、支えだった。

 星が、やけに近い夜だった。

「どうしてさ……」

 美咲が、ぽつりと言う。

「どうして、彼はわかってくれないんだろ」

 悠人は、星を見たまま答える。

「……わからない人も、いるんだよ」

(僕なら
 君を不安にしない
 君を泣かせない)

 でも、その言葉は空に溶かした。

「ねえ悠人」

「うん」

「もしさ……
 私が、ずっと恋愛で失敗し続けたらどうする?」

「……」

「そばにいてくれる?」

 胸が、ぎゅっと鳴った。

「……いるよ」

「ずっと?」

「……うん。ずっと」

 恋人じゃなくても
 形がなくても

 それでもいいと、自分に言い聞かせる。

 美咲は、少し笑った。

「悠人がいてくれてよかった」

「……そう?」

「うん。
 なんでも話せるんだもん」

 友達であることの、最大級の賛辞。

「……それは、よかった」

 帰り道、別れ際。

「じゃあ、またね」

「また」

 彼女が歩き出す背中を見ながら、悠人は小さく呟いた。

「……この先ずっと
 君を見てる」

 星は、何も答えなかった。
 それでも、夜は冷たすぎなかった。

ーほいたらねー

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【恋人】鈴木雅之


想いをいま届けたい この先ずっと
あなただけを いまでも ここでみている

近づいた肩 寄り添うふたり 星空にためされてる
時々なぜか 触れる指先をつかまえてしまいそう

いまはただ 何も気づかなくていい 僕の気持ち 何ひとつ

あなたが いま望むなら いますぐ強く
抱きしめたい 奪ってしまいたい
どうして 困らせるほど つのる想いは
ただ僕には 泣きたいくらい恋人

泣いているのに微笑まないで 唇が震えている
ちがう愛ほど 余計つらいこと 誰よりもわかるから

強がってみせる 友達のままで みつめている 僕にまで

想いをいま届けたい この街角で
抱きしめたい かわらない強さで
あなたを いまみつめてる この先ずっと
ただ誰より 瞳 きれいな恋人

あなたがいま望むなら いますぐ強く
抱きしめたい 奪ってしまいたい
どうして困らせるほど つのる想いは
ただ僕には 泣きたいくらい恋人

想いをいま届けたい この先ずっと
抱きしめたい かわらない強さで
あなたを いまみつめてる いつでも側で
ただ誰より 瞳 きれいな恋人

最後までお読みくださりありがとうございました。
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