シグナル 【20歳のめぐり逢い】

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9月の午後、駅のプラットフォームは静かだった。
枯れ葉が風に舞い、オレンジ色の光がホームを染める。
僕はふと空いたベンチを見つけて腰を下ろした。疲れた体を休めるための、ほんの小さな隙間。

隣に座る女性に、僕は最初は気づかなかった。
しかし、ちらりと視線を落とすと、頬に小さな光の粒──涙──が浮かんでいる。

「……どうかしましたか?」
思わず声をかけた。

彼女は驚いたように顔を上げ、そしてまた目を伏せた。
「いいえ、別に……」
けれど、その声には震えが混じっている。

僕も、かつて失恋で心を壊しかけたことがある。
あのとき、見知らぬ誰かに声をかけてもらって、また生きる力を取り戻したんだ。

「僕も……昔、そういうときがあってね。誰かに声をかけてもらって、それからもう一度立ち上がろうと思ったんだ。」
つい、自分の経験を話した。

少し、彼女の肩が緩んだ気がした。
「実は私……今日ね、彼と別れてきたの。ずっと支えてきたのに……裏切られて……命をかけた恋だったのに、もう誰も信じられない……」
言葉は途切れ途切れで、彼女は嗚咽をこらえながら続けた。

「辛かったですね、でも大丈夫ですよ、でも時が忘れさせてくれる」
僕がそういうと彼女は涙をぬぐった。

その日から、僕たちは駅でよく顔を合わせるようになり会話を重ねた。
最初はぎこちなく、けれど徐々に心を許す。
やがて、互いの存在がなくてはならないものになった。

数か月後のある日、僕は彼女の20歳の誕生日を祝うために、小さなレストランに誘った。

「今日は君の誕生日だね。もう二十歳だ。お酒も大丈夫だよ。乾杯しよう、一緒にワインで祝おう」
赤ワインのグラスが揺れる。
「……大人になった気がしないわ」
彼女は照れたように微笑む。

「いいんだよ。過去なんて忘れて、出直せばいいんだよ」
僕は静かに言った。

…….彼女の手首には、まだ過去の傷がまだ残っている。
けれど、今の彼女の手は、僕の手の中で温かい。
「君のためなら、ずっとそばにいるよ」

彼女の瞳が潤む。
「……そんなふうに言ってくれる人、初めてだわ」

その夜、帰り道の駅前で、彼女がふと立ち止まる。
「ねえ……私、まだ怖いの」
小さな声で、震えながら言う。
「誰かを信じるの、すごく怖いの……裏切られたくない……」

僕は彼女の肩にそっと手を回した。
「わかるよ。怖いよね。でも、俺は君を手放さない。何度でも支えるって、約束する」
言いながら、僕の胸も熱くなる。

彼女は小さく息をつき、そして顔を上げた。
「ねえ……本当にいいの?」
涙が溢れ、頬を伝って落ちる。
「本当に、私を全部受け止めてくれる?」

「ああ、全部だ。傷も、涙も、全部だ」
僕は彼女をそっと抱き寄せた。
風に舞う枯れ葉が二人を取り巻き、夕日の光がオレンジ色の輪を作る。

彼女の涙が、今度は悲しみではなく、希望の光に変わる瞬間を僕は感じた。
「ありがとう……」
小さな声で、でも確かに。

「これからは、ずっと一緒だよ」
「うん……ずっと」

手を握り合ったまま、二人で夜の街を歩く。
過去の痛みも、裏切りも、もう二人を引き裂けはしない。
駅のベンチで交わした偶然の言葉が、今、確かな絆になっている。

枯れ葉が静かに落ちる音が、まるで二人の心に寄り添うように響いた。
涙は、悲しみではなく、愛と希望の光に変わった。

ーおしまいー

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シグナル 【20歳のめぐり逢い】


風に震えるオレンジ色の
枯葉の舞いちる停車場で
君と出逢った九月の午後
男と女のめぐり逢い

君の話す身の上話しが
いつか涙でとぎれてしまう

命を賭けた恋に破れて
心は傷ついて
人を信じる事ができない
そんな女だった

月日は流れて季節は変わり
いつしか二人は愛し合う
今日は君の誕生日
ワインを飲んで祝おうね

20歳になって大人になって
出直すんだね過去など忘れ

手首の傷は消えないけれど
心の痛みは
僕がいやしてあげる優しさで
君のためなら

20歳になって大人になって
出直すんだね過去など忘れ

手首の傷は消えないけれど
心の痛みは
僕がいやしてあげる優しさで
君のためなら
君のためなら

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